「何かを見ながら絵を描くのはずるい」。
いきなりですが、こんな考えをもってはいませんか?
とくに脱初心者~中級者に足を突っ込んだかた、いわゆるそこそこ描けるようになってきたかたに多い考え方です。
しかし残念ながら、なにも見ずに描くひとは絶対上達できません。
今回はイラスト作業にあたって「いかに資料が大切か」をテーマにまとめていきます。
*目次*
イラストに資料が必須なワケ
思い通りに描けない
絵を描いているとどうしてもぶつかる壁が、「思い通りに描けない」。
原因はたった1つ、『頭に上手くイメージできていないから』です。
あなたの頭にあるイメージ、「何となくこんな感じ」で止まってないですか?
たとえば、服のしわ。正確に1本1本、頭のなかに描けていますか?
頭のなかであれ、細かいところまで正確に思い浮かべることができれば、実際に手を動かすのはたやすいものです。
逆に思い浮かべられなければ、手は動いてくれません。
あなたの手に描けるものは、「あなたの頭のなかにあるものだけ」なのです。
たとえば、国民的アニメ『妖怪ウォッチ』のジバニャン。
一度も描いたことがなければ、思い浮かばないのではないでしょうか?
イメージはあるけど、正確にわかることは赤くて、ネコで・・・なんてあたりさわりのない情報ばかり。
黒目はどれくらいの大きさだった?
口の大きさはどれくらい?
ヒゲははえていた?
なんてこまかい情報、意識してないとわからないものです。
ぼんやりとしたイメージだけの状態では、なんとなくの絵しか描けません。
どうしてなんとなくのイメージだけでは描けないのでしょう?
それは、「絵を描く」行為そのものを分けて考えてみればわかります。
「絵を描く」行為の分析
「絵を描く」行為、実は3つに分けることができます。
1.見る【入力】
2.イメージする【想像・変換】
3.描く【出力】
この3つ、少し具体的に説明します。
1.入力:対象のかたち、特徴をとらえる(赤い、丸い、へたがある)
2.想像・変換:入力した情報を元に、自分でイメージ・アレンジする(こんな形だ、葉っぱをつけてみようか、色をかえて青りんごにしてみよう)
3.出力:入力、変換した情報をもとに手を動かしてイラストにする

こう分析すると、意識の差はあれど、絵描きであればだれもがやっていることです。
どれも大切な要素ですが、3つ目の「出力」だけに集中してしまう人がひじょうに多い。
「出力」だけに注目した「手の描き方」「かわいい女の子の描き方」そんな講座や教本が目立っています。
3つの柱なのに、1本だけで支えようとしてしまう。これだと崩れたり、ぐらぐらしたりするのも仕方ないですね。
では、のこり2つの要素を、どうやって育てるのか。
じつは2つをぐっと育てる方法が存在します。
それが、「資料を見ること」なのです。
資料を見るメリット
「入力」と「想像・変換」が鍛えられる
「資料を見る」というのは、かんたんに聞こえますが、とても頭を使う行為です。
目、脳、手をフルで使って描く。
見て、考えて、手を動かす。
単純ですが大変なこの作業のくり返しで、知識と経験が溜まっていきます。
ただ描くだけ、出力ばかりに力をいれていては、新たな知識がはいってきません。
ただ見るだけ、入力ばかりでも経験値として溜まりません。
資料を見ながらの『描く』で得られる経験値は、見ない『描く』で得られる経験値は段違いです。
「言い訳しない姿勢」の構築
こんなにも大切なことなのに、怠る絵描きは少なくありません。
「何かを見ながら絵を描くのはずるい」なんて固定概念にとらわれているひともいます。
とにかく自分のなかにあるイメージだけで、なんとかしようとするのです。
しかし、
じつは上手い人ほど資料を見てます。
実際にわたしが知っている上級絵描きさんは「資料のために」と建築の本を買ったり、じぶんの手の写真専用のフォルダをつくっていたり、とにかく資料をとても大切にしています。
上手なひとはとても素直が多いのです。素直にお手本にたよっているのです。
逆に初心者や、伸び悩んでいるひとは、自分の力だけでどうにかしようとします。それがすばらしいことだと、信じているかたが多いのです。
「なにも見ずに描きました」
「一応、資料は見てないです」
こんな「何も見てないよアピール」、一度は見たことがあるのではないでしょうか。
少し手厳しいことを言いますが「資料を見るのも怠るばか者です」なんてアピールしているようなものです。
「資料みてないからこの絵は完成度が低いんだよ、みればもっとうまく描けるよ」なんてメッセージが見え隠れするアピールもまたありますが、隠されたままの実力なんて誰も認めてくれません。
別にお手本から全て抜き取れなくてもいいのです。資料をみたから上手くなきゃいけないルールもありません。
下のイラストは私が左の写真をお手本に描いてみたものです。見てわかる通り、まだまだ発展途上です。

また、そっくりそのまま描いてはいません。
お手本を見て「変換」するのはけっこう楽しいです。
「髪はもうちょっとボリュームを出そうかな」
「くびれを見せた方が綺麗かな」
なんて写真に自分の想像や妄想を加えたり、現実を引いてみたり。
そんな試行錯誤も、お手本があるからできることです。
まとめ
お手本を見る。実際にしてみると、かなりめんどくさいことです。
資料を探すのがそもそも大変だし、やっと見つけた資料とにらめっこしながらちょびちょび描いていくのも疲れます。
でも、上達するひとはそれを怠らない。「見ないこと」を言いわけに、てきとうな絵を描かない。
ばりばりのプロならまだしも、修行中の身であれば、そういった努力をせず上手くなろうなんて夢のまた夢です。
イラスト上達するには、「ていねいに描く」ことが必要不可欠。
「お手本を見ながら描く絵」は「ていねいに描く」の表れの一つです。
たいした経験値ももたず、「ていねいさ」を放棄した絵描きが上達できるはずがありません。