前回、イラストのセンスについての定義と磨き方について考えました。
今回はその具体的なエクササイズを4つ紹介いたします。
前回の記事を前提にしておりますので、まだ見てなければ前回を見ておいてくださいね。
100本ノック

情報をひろって描く力を鍛える訓練です。あらゆる情報や可能性を、紙に描き散らすことを目標にします。
「画力をあげるために必要なのは、とにかく数」という意見は間違いではありません。
もちろん質も同様に重要ですが、質をあげるにも考える頭とそれを描きだす力が必要です。数をこなすことで、それを鍛えるための訓練です。
とにかく、100枚。
顔でも、服でも、全身でも。センスがほしい分野をピンポイントで、100描きましょう。
タウンウォッチング
タウンウォッチングとは、その名のとおり、街を歩きながら、お店や街並み、そこにいる人を観察することです。
散歩の一種ではありますが、マーケティングの手法でもあります。
有名広告社の新人研修にも、取り入れられていると有名です。
ひとのしぐさや生活。物や、お店の雰囲気、装飾。
足をつかうことで、街の空気を肌で感じることができます。
これらの情報や刺激を、すべてヒントにしていく、という手法です。
テーマを決めるのも効果的です。
「今日は靴」といったように、徹底して足元を見続けてみる。
いろんなデザインからインスピレーションを得たり、靴のかたちの変化をデッサンにいかしたり。
思いもよらぬ発見が、絵に反映されることも少なくありません。
人間観察

「我々は人間についてあまりにも知らない。絶望的に知らなすぎる。」
ドイツ詩人のヘルマンはそんな言葉を残していますが、まさにその通りです。
「歩くときは腕を前後にだす」「笑うときは口角をあげる」など、わたしたちは『だいたいの人間の動きがどういったもの』か、知っています。
しかし、一度じっくり、こまかく観察してみると、いかに理解をしていないのかがわかるはずです。
たとえば、歩くときの重心のうごきや、女の子が喜ぶときどんな手の動きをするか、子供が走るときの腕の振りあげ方。
相手に伝わるほど見つめると気持ち悪がられてしまいますが、理解の深さによって絵の説得度がまるでちがってきます。
アニメ業界では、日常風景を「日常芝居」と呼びます。
魔法をつかったり、敵と戦ったりなど『非日常な風景』は、だれもがじっさいに見たことがありませんから、多少ごまかしても気になりません。
逆に、ご飯をたべたり、着替えたりする『日常風景』は、だれもが見たことあるし行っているから、ていねいに描かないととたんに嘘っぽくなってしまう。
だからこそ、ありきたりな日常描写にこそ、もっとも力をいれているそうです。
イラストにおいても「日常の風景」を描くことは少なくありません。
人間観察は、その描写を深める大事な作業です。
イラスト研究

優れたイラストには、多くの技術が見え隠れしています。
たとえば構図や、加工テクニック、色の置き方や選び方。
こういったイラストの表現を徹底的に観察してみよう、というトレーニングです。
優れた絵描きは、どうやって絵を魅せているのか。
じっくり観ないと、みえてこない表現がみえてきます。
まずは10枚ほど好きなイラストを集めましょう。テーマは自由。
10枚集めたら、「なぜこの絵なのか」をじっくり探ります。その絵のどこに惹かれたのか。
ここの色合いがきれい。どういう色を使ってるんだろう。
目の描き方が素敵。上まぶたの描き方を真似できないだろうか。
そんな自問自答をして、あなたの位置を確認しましょう。
一度でもひとつでも、答えがわかれば、あなたの尊敬する絵師の定義がすこしみえてきます。
いつもであれば何も考えず、「好き嫌い」だけで終わるところを、こうして考える材料にすることで、一歩先へと進めるはずです。
まとめ
イラストの評価は、「好き嫌い」で決まります。
わがままで、不規則です。
それでも、評価を得ていくためには、誰かに「好きになってもらう」しかありません。
その「材料」が、知識です。
たくさんの「ものごとの魅力」を知っていれば、時間がかかっても、それを絵に昇華していくことができます。
多くを見れば見るほど、知れば知るほど、あなたのなかに材料が入っていきます。
センスは、「材料をどう扱うか」よりも先に、まず「材料があるかどうか」で決まります。
まずは「とにかく材料を集める」からはじめましょう。