「絵に立体感がない・・・」そんな悩みをもっていませんか?
模写をしたり、トレスをしたり、同じようなイラストができるはずなのに、なぜかぺらぺらな絵ができる。こんな現象に引っかかってスランプに陥ってはいないでしょうか。
だいじょうぶ、この現象には理由があります。今回は、立体感のある絵のためのさいしょの一歩、「立体感を出すテクニック」の紹介です。
*目次*
立体感がない原因
なぜ、あなたの絵に立体感が出ないのか。原因はひとつです、情報が少ないから。
立体とは、すなわち空間・奥行です。あなたの絵に、この空間・奥行を教えてあげる情報が極端に少ない、または無い。そのせいで、見るひとに絵の空間が伝わらない。だからぺらぺら絵になってしまうのです。
ではどうしたらいいか、情報を入れればいいのです。空間・奥行を教えてあげる情報は、大きく分けて3つ。
1.影
2.線
3.奥行の形状
この3点です。では、詳しくみていきましょう。
立体感を出すテクニック3点
1.影
立体情報のうち、最もきほん的な方法です。影をつけるだけで、そこに空間が生まれます。
たとえば、つぎの絵。

おなじ丸に、影だけ変えてつけてみました。これだけで、左は床に、右は宙に浮いて見えませんか?
これは影で床とボールの位置関係をあらわしています。ポイントは2つ。
1.ボールと床が近くにあるほど、影も近くにできる。
2. ボールと床がはなれるほど、影はぼやけて、あいまいなものになる。
その2つを考えながら影をつけるだけで、ボールの位置がかわってきます。ただ影をつけるだけで、そこに空間がでてくるのです。
初心者向け影の付け方
「そもそも影をつけるのがむずしい」、そんな方のためにかんたんな影の付け方を紹介します。
影になれない初心者のかたは、つぎの2つのポイントだけを抑えてみてください。
・影は下におちる
・影は奥におちる
この2つ。まずはこの2つだけを考えてつけてみてください。「バカにするな」と怒られてしまいそうですが、わかっていても案外、絵であらわせないときは少なくありません。
たとえば首と顔だったら顔のほうが上に、また手前にあります。【上・手前】 だから【上・手前】の顔の影は、【下・奥】にある首におちるのです。

影を描くときあなたがすることは1つだけです。上の2つのポイント、【上・手前】にあるものの影を【下・奥】にあるものに落としてあげる。
それももっとかんたんに、線画と同じ色でのベタ塗りをおすすめします。影の色を考えはじめるとどんどん複雑になってしまいまうので、ひとまず色は無視をしましょう。
下の絵は、上の2つのポイントだけを抑えて影を足してあげた図です。これだけで立体感がちょっとちがってみえませんか?

影は「下」と「奥」、とりあえずは2つだけ。+αの迷わないポイントは「影は線画と同じ色でのベタで」。
複雑なことは慣れてから学んでいけば大丈夫です。まずはちょっとずつ、影のセンスを磨いていきましょう。
2.線
2つめのポイントは、線です。この線の描き分けが、立体の情報へとつながります。描き分け法は、おもに3つです。
1)質感でかえる
【やわらかい、存在感がうすい】→細い線 (例:髪のけ、ファー、ガラス、水、湯気、草、葉っぱ、etc…)
【かたい、存在感がある】→太い線 (例:顔の輪かく、手、目、スーツ、机、氷、石、木の幹)
2)光と影でかえる
【ハイライト・光の当たっている】→細い線
【光が当たらない・暗い】→太い線


3)遠近感でかえる
【近いもの】→太い線
【遠いもの】→細い線

下は元絵はまったく同じで、線だけをかえたイラストです。同じ絵でも、線の強弱・タッチをかえるだけで立体感や存在感がこんなにちがいます。

3.奥行の形状
「奥行の形状」ということばだけでは、頭に?が浮かぶ方がほとんどだと思います。言い変えると、「立体の情報を形状で教えてあげる」という意味です。
実際に絵でみてみましょう。

同じ立方体を描いたものですが、どちらのほうが立体的に見えるでしょうか。聞くまでもなく2ですよね。
では、1と2の違いは何なのか。こちらも聞くまでもないですね。この赤いところです。

ここが立体の情報です。
この赤いところが、「この四角には奥行がありますよ」と教えてくれているわけです。こういった立体情報を、絵に足してあげると、全体の立体度があがってきます。
とくに多いのが回りこみです。「後ろにつづいてますよ」と情報をいれてあげると立体的になります。


回りこみの情報があるだけで、絵の質はがらりとかわって見えます。
まとめ
立体感がしっかり出ているイラストは、それだけで魅力があります。「なぜ魅力的?」という質問があれば、わたしは迷わず「思いやりのある絵だから」とこたえます。
絵は誰かに伝えなければ意味がありません。
あなたの頭のなかでは、いかに「これは女の子」「この服はつるつる生地」と絵を描いたとします。
しかし、見るひとに伝わらなければ、その絵は男の子かもしれないし、ざらざらの服かもしれません。当たり前ですが、あなたの絵を見るひとは、あなたの頭のなかなんて知らないのです。
上手い絵は、作者が一生懸命に情報を与えています。
「これはつるつるの生地だから艶をだすよ」
情報をわかりやすく見せて、なにも知らない「絵を見てくれるひと」へ教えてあげる。立体感はその情報でとくに大切なひとつです。
「見てくれるひとに、なにを伝えてればわかってくれるか」を考え、絵に表していくこと。これが魅力的な絵につながる、だいじな一歩です。思いやりをもって描く絵には、いやでも立体感がついてきます。