線画、線。イラストとはきってもきれない関係です。
いい線がひけない、線画がきれいにできない―――いろんな線に関する悩みがあると思います。というか、わたしの悩みです。線にはげしく悩まされてる、しがない絵描きです。
というわけで、思い立って「線について勉強しよう」と立ち上がりました。
ところが、いざ調べてみると、ない。ネットの情報、イラスト教本。「線画の説明」は見つかっても、「線そのものの引き方」については全くといっていいほどありません。
あったとしても本でいうと1ページあるかないか。あまりに少ないので海外サイトまでいきました。決して得意ではない英語に、ひぃひぃ言いながら辞書を片手ににらめっこ。今回は死にもの狂いであつめた「線の情報」まとめです。線、かんたんそうに見えて、じつはけっこう深いものです。
線とはなにか
じつは、「線」は実世界には存在しません。わたしたちの目に見えるのは、物と物の境界線、その色やかたち。それを表すかんたんな道具として、イラストでは線を使います。
イラストの本質は抽象化です。つまり、そのかたちを取りだして、よりかんたんなかたちで表す。
現実世界にある、あふれんばかりの境界線。絵描きはその取捨選択をしながら、線として画面にのせていきます。
話を戻しましょう。結局、「純粋な線としての線」は存在しない。「ものの境界」や「空間」をあらわすだけ。
だからこそ、絵の中の線は常に何かの意味を持って生まれなくてはいけません。
もしも、何の意味もない線が作品に紛れ込んでいたら、それは線ではありません。ただのごみです。
こんなかわいそうな線はつくってはいけない。必要なのは、そんな線は生み出さないという決心です。これは上達のための1歩ではなく、作品づくりのきほんのマナーです。
線のひき方
さて、線の考え方についてまとめてみました。お次は、実際に線をひいてみます。もちろん、線のひき方は人それぞれ。正解なんてありません。しかし、それをいちから探していくのは非常に多くの時間と労力がいります。
ここでは集めた情報でわたし自身がつかえるとおもった方法、もしくは今までつかってよかった方法を、まとめて紹介します。
くり返しますが、これが正しい唯一の方法ではありません。納得できるところだけ選んで、つかってください。
線をみない
線を描くとき、多くのひとは、線そのものや握ってるペンの先をみています。ただ、これだと行き当たりばったりの線になってしまいがちです。
ではどこを見るのか、それは目的地です。つまり、線をみずに、線をもっていきたいポイントをみる。

あとは手に任せれば自然にその場所へ持ってきてくれる。慣れが必要ですが、意外とうまくいきます。
流れにしたがう
流れに従って、線をひく。どういうことでしょう?こういうことです。

左が、行ったり来たりのじぐざぐ線。右が、流れにしたがって描いた線。例えば、髪は上から下へと流れがあります。だから線も、上から下へ。
つまりは、線の一方通行をつくる。じぐざぐ線では出てこない流れが見えてきます。
ひじを動かす
これはあなたも、一度はきいたことがあるのではないでしょうか。それほど大事な動きなのでしょう。試したことがあればわかるでしょうが、かんたんな技ではありません。
むしろ、手首だけを動かすほうはかんたんです。だれもが始めにであう描きかたですが、上達したいならば、抜け出したほうがいいかもしれません。
なぜなら手首だけの描き方だと、どうしても短い線しかひけないからです。ペンを動かせる範囲が手首のうごくスペースのみ、ほんの小さいスペースです。これだと長い線なんてひけません。

短い線しかひけないとどうなるか。ざかざか線になったり、全体を把握できなかったり。いらない線を生み出しやすくなってしまいます。
とくに長い線は輪かくに必須です。描く絵が複雑になるほどに、細かい部分と同じくらい、輪かくの美しさが求められます。
ここでは初心者から中級者向けに「ひじ」といってますが、最終的には肩、さらには背中までも動かして描くプロも多くいるようです。
何度も言いますが、肘を動かすのはかんたんではありません。すぐにできないからといって落ち込むことはないのです。ゆっくりちょっとずつ慣れていきましょう。
絵を描く人のなかには、上手くなるにつれて、痛める場所が手首、ひじ、肩と移っていくひともいるそうです。
まとめ
線の練習は、後回しにされがちです。デッサンや色塗りとくらべれば、たしかに地味な過程かもしれません。
しかし、疑いようもなく線はイラストの土台です。イラスト界の巨匠、ルーミスは自らの本で一番最初にその項目を置いているほど、「線」を重要視しています。
創造的な芸術は、創造的な線から始まる。
「ルーミスのクリエイティブイラストレーション」(訳:山部嘉彦)より引用
「創造的な芸術」のスタートラインに立ちたい―――なんて願いながら、「ひじよ動け」と唱える今日この頃です。