肌に影をつけるのは、かんたんな作業ではありません。とくに顔は、だれもがそこから描き始めるスタートラインゆえに、影で迷ってしまう絵描きはあとを絶えないでしょう。
ここでは、自己流・かんたんな顔の影の付け方を紹介します。
影ができる2つのパターン
まずさいしょに考えておきたいのが、影ができるパターンです。
影ができるのはどんなときでしょうか。答えは、光がさえぎられるときです。たとえば、光にあたっているボールをみてみましょう。照らされているほうと逆の面、こちらは光をさえぎられ、影になります。

また、ボール全体が壁などで光をさえぎられ、影となることもあります。

つまり影ができる場合は、大きく分けて2パターンです。もの自らで光をさえぎられるか、ほかのものが重なってさえぎられるか。
この2パターンを意識して影をつけましょう。注意するべきポイントは、どちらも3つです。
1.光源がどこにあるか
2.重なっているものはどれか
3.物体はどんなかたちか
2つのパターンと3つのポイント、これらを考えながら、顔の影を見ていきましょう。
肌の塗りメイキング
では、じっさいに顔の肌を塗ってみましょう。今回はこちらの女の子の顔イラストを塗っていきます。
※この先、小さい画面だと見えにくいです。

まずは光源をどこにおくか決めましょう。きほんは人物の上です。今回はわかりやすく左上におきました。

ではこの光源からでる光を考えながら影をつけます。影ができるパターンを思い出してください。
1.もの自らで光をさえぎられる
2.ほかのものが重なってさえぎられる
この2つ、慣れている絵描きは無意識にいっしょに塗ることができますが、慣れていないひとはわけて考えましょう。
まずは、『2.重なるものでできる影』から。なぜなら2パターンのうち、こちらのほうがかんたんだから。重なっているもの、ここでは、「おでこと髪」「頭と首」の2つです。おでこの肌には、髪の影が。首には、頭の影がおちます。

つぎに、『1.もの自らで遮られる影』です。もの自ら、つまり影をつける対象の立体を把握しておかなくてはいけません。だから、はじめに『2.ほかのもので重なる影』からつけました。こちらのほうが頭をひねらないといけません。
顔の立体のとらえるためには、面で考えると見えてきます。
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参考:『アーティストのための美術解剖学
』(p97より模写)
とくに影になりやすいのが、二重ラインや鼻、くちびるの下です。厚塗りなどで情報量を増やしたいときは、くちびるの厚みや目の際などもっと影を落としましょう。ここではシンプルにくちびるの下・鼻・二重ライン・眉・耳にのみ影を落としました。

また、ぼかしで輪郭を塗ります。

ぼかしで塗るのは、頬の丸みのためです。かたちが球体に近くなるほど、影は曖昧になります。逆に立方体などかたちのはっきりしたものほど、影もはっきりとします。
つぎに頬にピンクを入れ、チークっぽくします。これは完全に好みですが、かわいい女の子を描くためには必須の工程です。

さいごに、ハイライトを入れて完成です。ハイライトとは反射光のこと。表面が光を反射し、明るく見えるところです。
このハイライト、入れるか入れないかで、肌のつやつや感が大きく変わってきます。入れすぎると不自然になるので、慣れるまでは「光源のある向きにだけ」などルールを決めていれること。
自己流の入れ方を掴んだら、どんどん入れてあげましょう。プロのイラストを見るとわかりますが、ハイライトの入れ方が大きな個性になることが少なくありません。
まとめ
人体に影を落とすのは、多くの絵描きにとって鬼門です。なぜなら立体把握という、決して簡単でない課題が一緒に含まれているから。
しかし、単純化してパターンを覚えてしまえば、思ったよりもむずかしくはありません。慣れてくればアレンジもでき、それがひときわ楽しいのも、肌の面白いところです。
まずは単純に2つのパターン、
1.もの自らで光をさえぎられる
2.ほかのものが重なってさえぎられる
を抑えてつけて、顔に影をあげましょう。
むずかしく考えず、単純化。これが鬼門をくぐり抜けるためのカギになります。