イラスト上達において、人体デッサンは避けて通れない道です。人体デッサンがどれだけできるかが、画力を左右するといっても過言ではないでしょう。
今回は人体デッサンに悩むひとならぜひとも購入しておきたいイラスト教本、ジャック・ハムの「人体のデッサン技法」について紹介します。
概要
描写を容易にする技法を示したハンドブック。簡易化した手法とたくさんの真新しいヒント・助言を提供。数百に及ぶイラストによって、一段一段手順をふんで指導します。 (本書・表紙より)
書いてあることはむずかしくない。むしろ、内容そのものはやさしいです。かなり古い本なので、内容が古いのではないか、と疑うかたもいるかもしれません。実際にアマゾンのレビューでそう言ってるひともいます。
古いとはいっても人間です。たかが40年前と今、人体の作りががらりと変わったわけではありません。あごが細くなったとか細かな変異はあるでしょうが、骨の作りが変わったり、筋肉の数がへったりなんて構造の変化は起こってないのです。
人体を描くうえでのジャック・ハムの見つけたノウハウ集といった印象。人体のかんたんな構造と、それがどう表面に出てくるのかを主題においています。
流れに沿って一から始めるタイプの参考書ではありません。ポイントと流れだけを説明した教科書タイプと、迷ったときに開く辞書タイプの融合的な立ち位置です。
「全部クリアしてこの本を卒業、つぎの本へ行く」という使いかたよりも、「どうも足が上手く描けないから足のページ見て練習する」「手元において、わからなくなったらこの本をめくる」という使いかたがあっています。
良いところ○
○表面上どう見えるかを主題においているので、人体構造などむずかしい話だけでおわらない。実際に自分流のイラストに活かしやすい。
○イラスト教本ではよくある、「結果(完成形のイラスト)だけ」ではなく、ステップバイステップで描き方を細かく載せてくれている。「これ模写したら上手くなるよ」ではなく、「まずは、この線をひいて。つぎにこっち。この点と、この点には気を付けてね」といった感じ。
良くないところ×
×絵柄が古い。40年も前の本なので、とうぜん今の流行とはかけ離れている。
→じぶんの絵に使えるポイントだけを抜き取る必要がある
×レイアウトがわかりにくい。イラストと文章が、境界線なく散らばっているので「これはどこの説明?」と探す手間がある。
×全ページがモノクロで、太文字などの強調もない。どこが大事かがわからない。
個人的な使いかた
カバーをすてる
まずはカバーを捨てます。新品を購入した方はすくなからず抵抗があるかと思いますが、べろべろして本をめくるのに邪魔だし、中身はカバーとまったく同じ絵が描かれているので他の本ほど大きい抵抗もありません。
大事なのは本ではなく、本の内容をどうイラストに活かして画力向上に役立てるかです。そのためにカバーがばらばらなって、そのたび練習の時間を取られるのは本末転倒です。どうしても抵抗があって捨てることができない方はテープなどで固定しましょう。
色塗り・線引き
上でも触れたように、レイアウトが非常にわかりにくいです。なので、自分で境界線を引いたりしています。また、強調もないので、大事だと思うところには遠慮なく線をひきましょう。イラスト上の筋肉を色でぬってわかりやすくするのもおすすめです。
インデックス
わからなくなったときの辞書として使うためにも、このインデックスは便利です。100均のインデックスシールを貼って使っています。

私がインデックスしているのは背中・首・肩・腕・手・脚・足・靴・服の9こです。髪や横顔など本自体にはもっと多くの項目がありますが、「めくる頻度が低い」と考えた末にこの9つにしぼっています。
まとめ
個人的に、もっとも付き合いの長いイラスト教本です。評判がよくて買ってみた、というベタな出会いでした。いざ開くと、古い絵柄と古風なレイアウトで「堅い!わかりにくい!」と最初から投げてしまったのです。
ところがイラスト上達で悩んでいた時期に、美大に通っていた友人から「この本は本当にいいよ」と聞いて単純な私はもう一度開いてみました。辞書的な使い方、この本に合った使い方を教わったのです。
するとびっくり、すごくやさしい内容なのです。よくあるイラスト教本はすでに完成されたイラストを持って来て、「ここにくびれ」など申し訳程度の説明なのに、この本は最初の線はどこを引くか、まで描かれていました。
それ以来は人体デッサンの欠かせない相棒です。初歩から応用まで、幅広く収録されているのもこの本の特徴です。画力向上にあわせて、この本から学べることは尽きません。
初心者さんも中級者さんも、人体デッサンで伸び悩んでいる方はぜひ、お手に取ってみて下さいませ。