色塗りはイラスト上達においても鬼門のひとつです。
デッサン同様に色塗りもじぶんの欠点がわかりにくい分野です。
自分の絵をみて、「なにか違う、パッとしない」と感じはしても具体的になにがだめなのか、どう直せばよくなるのかがパッとわかる絵描きは少ないでしょう。
ここでは、初心者にありがちな色塗りのパターンと脱出法をいくつか紹介します。
もちろん目指す絵柄や、描く対象によってもかわってきますが、ひとまず知識として頭に入れておくと、取り入れるか取り入れないかの選択が可能になります。
影が弱い

初心者が陥りやすい代表的な例がこちらです。みんな大体の影はつけるのですが、それが弱いとコントラストの低い、「パッとしない絵」になってしまいます。
対処法はひとつ、「影が落ちる場所」に徹底的に影を描きいれてみることです。
例えば上のイラスト、カーディガンの影が落ちていません。
裏地は隠れているので、影が落ちるはずなのに、表の生地とおなじ色で塗られているのです。
影が落ちるところには、しっかりとトーンを落として(暗い色で)塗ってあげること。
影をおとす場所は、むずかしく考えなくても大丈夫。簡単にいきましょう。
キーワードは「下・裏・奥」です。
光源が特殊な位置にない限り、「下・裏・奥」にあるものには、かならず影が落ちます。
「下・裏・奥」にあるものには、徹底的に影を落としてみてください。

ぼかしすぎ

エアブラシばかりで影を入れたり、ぼかし機能を使いすぎると、ぼやーっとしたピンボケイラストになってしまいます。
これでは、立体感がまったくないうえに、ものの質感もあやふやです。
ぼかしを多用する原因のほとんどは、影の入れ方がわからないから。
だったら対処法は先ほどと同じように、「下・裏・奥」のポイントでしっかりとした影を入れていくこと。
また、シワの描き方がわからないという場合。
そんなあなたは、まずは暗いところを塗って、明るいところを描き込んでみると楽かもしれません。
もちろん色んな場合がありますが、服は『暗い影の部分』よりも、『光が当たって明るい部分』のほうが、面積がせまい場合が多いのです。
また、シワのほとんどはパターンで描くことができます。
描けないのは正体がわからないから。描きたいシワはどっちのパターンなのかを考えると、正体がわかってぐっと塗りやすくなるはずです。

色がごちゃつき過ぎ

見るからにごちゃごちゃとしたうるさいイラスト、こうなってしまうのは色を絞り切れていないことが原因です。
まずは、描きたいテーマの色を絞ること。
ディナーは、前菜やスープがあるからメインディッシュをおいしくいただけるのです。これと同じように、イラストも主役の色を決めてあげる必要があります。
また、できるだけ原色はさけましょう。狭い面積でワンポイントとしてなら映えますが、広い範囲でつかうと目に痛くなりやすいです。
また、主役が2色以上のときは、色の組み合わせを考えるとまとめやすくなりますよ。

同じ色相ばかりを使っている

「影はしっかりつけてるのに、色に深みがない」。
そんなあなたはこの『色相変化なし』か、次の『色調補正なし』のどちらかに当てはまるはずです。
同じ色みの色ばかりをつかって絵を描くと、不思議と色に深みがなくなってしまいます。
その現象についてはこちらの画像がわかりやすいので、おすすめ。(海外サイトです)
Normal vs my shading by kawacy on DeviantArt
カラーサークルを動かすことを習慣づけましょう。

色補正をしていない

地の色から、影とハイライトだけ塗って、そのまま。つまり「色調補正をしていない」と、淡白な絵になります。
もちろんそれを魅力にする絵描きもたくさんいますが、テクニックとして頭に入れておきましょう。
色補正の方法は、大きく分けて2つです。
『レイヤーをつかう方法』と、『色調補正機能をつかう方法』です。
まずは『レイヤー』から。レイヤー、はたとえば「オーバーレイ」や「スクリーン」、「ビビッドライト」が代表的です。
レイヤーのモードはソフトによって変わってくるので、ぜひともいろいろ試してみてください。
レイヤーのモードを変えて、絵の上に重ねてみましょう。
たとえばオーバーレイで全体を青く塗ったレイヤーを上にあてるだけでも、色が全く変わってきます。

つぎは『色調補正』。
どのお絵かきソフトにも基本的なものがついています。(『ペイント』には無し)
起動方法もソフトによってかわってくるので、「ソフト名+色調補正」で検索すると起動方法がでてきます。
けっこうなチート機能です。
使いこなせれば、あなたのカラーイラストが間違いなくがらりと変わるでしょう。

線画調整

線画が浮いて見える、という場合は、ほぼまちがいなくこれです。
線画の調整をせず、描いたままの線画をつかっている。
対処法でもっとも有名なのが、『色トレス』です。
色トレスとは、「まわりの色に馴染むよう、線画に色をつけるテクニック」です。
「クリッピング」や「透明ピクセルのロック(不透明保護)」で、線の色はかんたんに変えることができます。
まわりの色に近い色を線画につかうことで、線が塗りになじんで自然な雰囲気になります。

ハイライトなし

ツヤのない絵は、ハイライトが抜けている・または少ない場合がほとんどです。
ハイライトを入れないと、マットな雰囲気の絵になります。
そのような絵を目指すにはいいのですが、質感が伝わりにくく、またツヤのない絵になるので、できるだけ取り入れることをおすすめします。
ハイライトとは、反射光のこと。
光があたって、跳ね返している部分がもっとも明るくなります。

まとめ
色塗りテクニックは、目指す絵柄によって必要なものとそうでないものが大きく分かれます。
今回は良くない例として紹介しましたが、逆にこれらを強みとしている絵柄もあるのです。
あなた自身の絵は、この7つのどれかに当てはまったでしょうか。
当てはまるものがあれば、脱出するべきか、強みにできそうか、をぜひ考えてみてください。
ただ、たとえ強みにできそうだとしても、一度は脱出してみるのをおすすめします。
イラストはトライ&エラーです。
一度やってみる、という経験値はぜったいに無駄にはなりません。