効果の高いイラスト練習をしたいのなら、守ったほうがいい3つのルール

画力向上を目指すのであれば「練習」はぜったいに必要です。では、どんな「練習」をするべきなのでしょうか。

 

単純にいうと「絵を描く」。この行いのくり返しにはなるのはまちがいありません。ただ、それが「ただのくり返し」になるか、「画力向上のための積み重ね」になるか。
「この練習はこっち」なんて、はっきりした線引きはありません。でも、どっちに近づくかで、結果ははっきり変わってきます。

 

たとえば、私たちは歯みがきを毎日、それも何年もくり返してます。ですが、ちっとも達人になれた気がしません。「ただのくり返し」で、ある程度のところまではいけます。でもそれ以上はいけないのです。

はなしをイラストに戻しましょう。「絵を描く」のくり返し。
どうすれば「画力のための積み重ね」に近づけることができるか。

今日はそのための練習ルールを3つ、紹介します。

 

ルール1 量より質を大切にする

イラスト練習においてしばしば議論を呼ぶのが、「質と量、どっちが大事か問題」です。プロの間でも意見がわかれる2択ですが、あなたはどちらだと思いますか?

もちろんどちらも大切です。しかし、どちらかを選べといわれれば、「量より質」と即答します。その理由は、練習はくり返しであり、くり返されたものをわたしたちは習得してしまうからです。くり返されたものが間違っていた場合、そのまま私たちのからだは覚えてしまいます。

「練習は完璧になるというより、練習で永遠になる、のほうが正確だ。
(中略)習得したスキルが正しい場合も、まちがっている場合もあるが、よかれあしかれ筋肉の記憶か思考回路に刷りこまれて、習慣となる。」
『成功する練習の法則』より引用
著:ダグ・レモフ、エリカ・ウールウェイ、ケイティ・イエッツイ 

 

たとえば、まちがった箸の持ちかたを直さずに育った子どもは、まちがった箸の持ちかたをする大人へと育ちます。まちがった走りかたを練習すれば、まちがった走りが上手くなります。

イラストも同じです。てきとうに描けばてきとうな描き方が身に沁みてしまう。

いざ、「真けんに描こう!」と意気ごんでペンをにぎっても、てきとうな描きかたばかりしてきた手にはてきとうな描き方しか覚えていません。そんなかなしい手に育ててしまわないよう、質を大切にした練習が必要なのです。

くり返しは「完璧」にはしてくれない、その代わり「永遠」をくれる。だったら時間をたっぷりかけて「完璧」をまねながら、それを「永遠」にしてもらうべきなのです。

 

ルール2 具体的な目標をたてる

なぜ、絵の練習をするのでしょう?絵が上手くなりたいからですよね。誰であれ、こんなぼんやりした目標はもってます。ルール2は、「ぼんやりではなく、もっと具体的に考えてみよう」というものです。

イラストの上達は2種類あります。

・積み上げ型
・逆算型
「積み上げ型」とは、いま目の前にあることだけを見てひたすら取りくむかたちです。一般的にみんながやってるのはこっち。
こっちのかたちがメジャーなのは、人間にとって自然な考えかただからです。おなかが減ったから食べる、眠くなったから寝る。
イラストだと、「1日1時間、イラストを描く⇒続ける⇒画力向上」ってな感じです。
「逆算型」はその逆。目指すべき未来を軸に、いまやることを決めていきます。「夏やすみの宿題、1週間まえには終わらせておきたい。じゃあ、毎日5ページやろう。」とか、意識しないとできないことです。

イラストだと、「こんな絵を描きたい⇒そのためにはどんな技術がいる?⇒どうやったらその技術が身につく?⇒いまはこの練習をしよう」という感じ。

どちらのタイプが正解なんてのはありません。でも、どちらのタイプが描きたい絵により近づけるのか。そのスピードが速いのはどちらか。気が向くまま思いつくままに絵を描いていく。描きたい絵を定めて、それに必要な練習をえらんでやっていく。もちろん、その絵に近づくスピードはちがいます。

たしかに積み上げないと見えないこともたくさんあります。目標にむかって積み上げていく。あるところで、目標に届くこともあれば、何かちがうと感じることもあるでしょう。そんなふうに立ち止まったときは、また新しい目標を定めて進めばいいのです。

ルール3 弱点を知る

こんな言葉があります。

「問題をきちんと述べられれば、半分は解決したようなものだ。」チャールズ・ケタリング

 

さて、1枚紙を出してください。ワードやメモ帳の起動でも大丈夫です。

お次は、あなたが自分の絵で、「苦手だな」「まだまだだな」と思うところをひたすらリストアップしてみてください。できたら、そのリストをひとつずつクリアしていく。ゲーム感覚でかまいません。

クリアできたときには、あなたはびっくりするほど上達しているはずです。

ちなみに、私が今一番自覚している弱点は線です。キレイに引けた!――と思って進めても、最終的にできた線画がいまいちぱっとしないのです。

そこで研究をすることにしました。対象は好きなイラストレーターの、片桐いくみさんや藤ちょこさん。そのイラストを拡大してみてみたのですが、意外や意外。はみ出し・ペンのひっかかったあと・重ね描き……なんて一般的な「キレイな線」と呼ばれるものには、およそ無いような特徴がけっこう見つかったのです。

 

senkatagiri
Are you Alice? 12巻』片桐いくみ著 二宮愛原作 42Pより引用

 

もちろん彼女らがそれさえ『あじ』にしてしまうのは、まねできない技術があるからでしょう。それでも、ひたすら「キレイな線をひく」ことばかりに目がくらんでいた私にとって、この発見は大きな実りです。

そしてこの実りは――いまだ収穫できてはいないものの――、私自身が「いい線がひけない」という自分の弱点に気がついたからこそ、みつけることができました。

 

「弱点を自覚すれば、つまり弱点に注意をはらえば、より多くの解決法が見つかる」『3週間続ければ一生が変わる』より引用
ロビン・シャーマ著 北澤和彦 訳

弱点を自覚しなければ、解決しようとも思うことができないのです。

まとめ

描け!描け!描いて描いて描きまくれ!さすれば画力は向上する

ネットでよくみられるこんな意見ですが、この記事はべつに異議を唱えているわけではありません。この意見は正しいと思っています。経験値はぜったいに必要です。得たものを、「身体で覚えて貯める」のはだれもがとおる道です。ただ、そこに考えるくせをつけておくと、「あたまで理解して貯める」という方法もとることができます。

 

描けばうまくなる、それは当然です。ではなにをどう描くか?この質問は絵描きであればだれもがぶつかるでしょう。今回の記事は、その答えのひとつをお話しさせていただいた、紹介記事でした。

こんな練習をすれば画力アップ確実!プロ棋士に学ぶ上達思考術

2015.12.06

画力向上のためのイラスト研究。その手順を紹介します

2015.10.22