イラストに限らず、どの分野においても、並外れて優れたひとがいます。
そんな「超一流な人たち」の練習を、科学的に研究した心理学教授アンダース・エリクソンさん。
彼は「練習」についての研究をまとめた本を何冊か出していますが、今回はそのなかの1冊「超一流になるのは才能か努力か?」を読んだので、すこし紹介をさせていただきます。
*目次*
そこそこの練習ではそこそこまでしか上達しない
いきなりですが、あなたはどれくらい絵が上手くなりたいでしょうか。
わざわざこんなブログを読んでいるくらいだから、たぶん、「そこそこ描ける」レベルでは、満足できない方が多いと思います。
もちろん「意識せずに手癖でさらさらっとキャラクターを描いて、周りを楽しませる」レベルで満足できるのであれば、それはそれで素敵なことです。
そのレベルまでであれば、単純な模写やスケッチの練習で比較的あっという間に到達できます。
ただ、あなたがそこよりももっと上に行きたいのであれば、話は変わります。
エリクソン教授によると、単純なくり返し練習で到達できる「そこそこのレベル」、つまり「身体が自然に動くレベル」に到達すると、そこで上達は頭打ちになるとのことです。
一般的に、何かが「許容できる」パフォーマンスレベルに達し、自然にできるようになってしまうと、そこからさらに何年「練習」を続けても向上につながらないことが研究によって示されている。
むしろ二十年の経験がある医者、教師、あるいはドライバーは五年しか経験がない人よりやや技能が劣っている可能性が高い。
というのも、自然にできるようになってしまった能力は、改善に向けた意識的な努力をしないと徐々に劣化していくためだ。(p42より引用)
正直、恐ろしい話です。
ただ何かを繰り返すだけの練習(エリクソン教授は「愚直な練習」と呼びます)では、いくらやっても上達しないどころか、劣化していくなんて、本当に怖いことです。
エリクソン教授は、そうならないために、改善へ向けた意識的な努力を継続的に続けることが必要だといいます。
イラスト上達するための練習
本文ではトッププレイヤーが共通して行っている練習の要素をまとめ、紹介しています。
「限界的練習」と呼ばれるその練習法については、ぜひとも本を手に取って読んでみてください。
本ブログでは、その「限界的練習」に近づくための「目的のある練習」について、ポイントを少しだけ紹介いたします。
1.具体的目標を掲げる
あなたが普段している練習には、目標があるでしょうか。
「ただ、描いただけ」だと、「愚直な練習」となってしまいます。
目的のある練習には、その名のとおり目的が必要です。
ピアノだと「課題曲をミスなく2回連続で弾けるようになる」、テニスだと「安定したラリーを20回以上続ける」といった具合にです。
イラスト練習でも、「目の描き方を覚える」「腕の筋肉を覚える」など、あらかじめ、目標を決めて取りかかりましょう。
それがないと、その練習が上手くいったかいかなかったかの判断ができないのです。
2.フィードバックを得る
あなたはちゃんと描けているのか、描けていないのはどこなのか、を把握できるかできないかで、練習の質は大きく変わります。
もっとも良いのは、第三者の目で、どこを直せば良くなるかを教えてもらうことです。
描いたイラストは、積極的にひとへ見せましょう。
できれば適切なフィードバックをくれるひとを味方につけると大きいです。
近くにフィードバックをくれる人がいないという方はpixivや掲示板で添削用のスレッドやコミュニティがあります。
そこへ投稿して反応をもらうのも手です。
3.コンフォートゾーンから飛び出す
始めたばかりの本当の初心者でない限り、すでに「楽に描ける部分」は少なくとも持っているはずです。
その「快適な領域」(コンフォートゾーンと呼びます)から抜け出す努力をしないと、いつまでたっても上達ができません。
知らない土地を歩くとき、1人で入ったことのないお店に入るとき、すこしドキドキしますよね。
これは普段の「快適な領域」から出ようとしているからです。
でも、こうやって開拓していかないと、いつまでたっても同じお店や地域をぐるぐるしているだけです。
そんな生活もいいかもしれませんが、イラストでいつまでたっても同じレベルでぐるぐるするのは良くないですよね。
一番多いのは、若い美男美女の顔だけでぐるぐるしている絵描きです。
「これしか描けない」なんて言い訳はやめて、コンフォートゾーンから抜け出す努力をしないと、ゆるやかに劣化していく羽目になってしまいます。
まとめ
「超一流になるのは才能か努力か?」、さわりだけを紹介いたしました。
トウキ時では一章のポイントを、数点選んでの紹介でしたが、内容の濃さが少しでも伝わればうれしいです。
当ブログ『絵心浪漫』には、「練習が苦しい」「絵を描くのが楽しくない」というお悩みのご連絡をよくいただいております。
今回こちらの本を読んで、そんな方々に強くおすすめしたいと思いました。
人によって参考になる部分は変わってきますが、とくにおすすめが第6章の「苦しい練習を続けるテクニック」です。
「読書が苦手」という方でも、1章と6章だけはぜひともがんばって読んでいただきたい。
がんばろう、というモチベーションアップにも繋がるので、ぜひともご一読を。