管理人は凡人絵描きです。
それでも魅力的な絵が描きたい。
では、魅力的な絵を描くためにはいったいなにが必要なのでしょう。
魅力的な絵を描く力、すなわち画力とはどこからくるのか。
今回はこの画力について、個人的な分析をまとめたいと思います。
あなたの画力やわたしの画力、いったいどうやって決まるのでしょうか?
画力決定の要因
画力を決定する要素とはなにか。「才能に決まってる」なんて意見があります。 わたしはその意見に真っ向から戦いましょう。そんな意見を認めたら上手くなれないですから。
もちろん才能も重要なポイントではあるでしょう。しかし。才能よりももっと大事なものが3つある、才なき凡人はそう主張したいとおもいます。
②テクニック
③経験値
この3つです。今回は画力向上に欠かせない、この3つの要素について分析をしていきます。
そもそも画力とは
まずは「そもそも画力とは何なのか」についてお話します。たとえば、ここに2人の絵描きがいます。AさんとBさんとしましょう。
AさんとBさんは仲良しで、今日もクラスのCちゃんにモデルをお願いして一緒に絵を描きます。

このAさんとBさん、2人とも同じ女の子を同じポーズで描きました。
出来上がった絵は同じものになるでしょうか?もちろん、ちがいますよね。
Aさんは鉛筆デッサンが得意で、鉛筆ですべてを表現します。Bさんはじつは脚フェチで、尋常でないこだわりを持って脚を描きます。さまざまな要素が絡みあって、できあがる絵は大きく変わってくるでしょう。
ただもしも、単純に【Aさんの画力】>【Bさんの画力】であれば、Aさんの絵のほうが人を惹きつけます。

いくらBさんの描く脚が官能的であろうと、そのうえの胴体や顔ががたがただと、悲しいことにだれも魅力を感じてくれません。
この画力、いったいなにで決まるのでしょうか。才能・技術・練習量・観察力―――どれも正解です。
才能・技術・練習量・観察力、その他色々なものでそのひとの画力が決まります。
ベタな表現ですが、イラストは「たった一つの正解」が存在しない世界です。「画力とは?」の問いの答えも1つではない。結局は総合力なのです。
「なんだよ。結局全部か、それじゃあ広すぎて何をすればいいのかわからないよ」なんて声が聞こえてきそうですが、そうです、残念ながら全部なのです。すくなくとも、長年自分の画力に苦しんできたわたしは、そう感じています。
でもそういい切られると本当に広すぎてどうすればいいかわからない。そんな方にちょっとだけいい知らせがあります。この、ありとあらゆる全ての要素、そのなかでも最も重要なものたちは、大きく3つに分けることができます。 全部!といわれるとよろめきますが、3つと考えると少し気が楽になりませんか。 私はなります。
そうです。それが、冒頭で紹介した3つの要素、
①知識②テクニック③経験値
この3つなのです。
画力向上にかかせない三大要素
①知識
まず最初の要素は「知識」。
いきなりですが、質問です。あなたはリンゴについてどれくらい知っていますか?赤くて、丸くて、へたがあって、芯があって、甘くて、たまに酸っぱくて・・・思い浮かんだでしょうか?
あなたの持っているリンゴの情報、それこそが「知識」です。この知識、もっていればもっているほど絵が細かくなります。

1の絵は【赤い/丸い/ヘタがある】という情報を元に描いた絵です。
2の絵は【赤い/丸い/固い(光を反射する)/上と下が若干黄色い/ヘタはしなっている/ヘタの生える所とおしりのところにへこみがある/上がふっくらしていて下の方が少し細くなっている形】という情報を元に描いた絵です。
どちらのリンゴの方が、画力が高く見えますか? もちろん情報の多い2の方ですね。
②の絵にはのリンゴの知識だけでなく【影がある方が立体的に見える/影のある方は色が暗くなる/固くてつるっとしたものにはハイライトが入る】など絵を描くうえでの知識も元としています。これが画力に対する知識の影響力です。
骨や筋肉など解剖学や、パース、補助色など色の組み合わせ。これらの勉強は、イラストの知識を広げるためダイレクトに関わってきます。知れば知るほど、あなたが絵に費やせる情報量は多くなる、つまりあなたの画力が伸びるのです。
②テクニック
いわゆる、技術です。画材やソフトの使い方、ちょっとした小技などです。1つ例を紹介しましょう。数すくない、わたしのお気に入りテクです。次の絵を見てください。

左側、前髪あたりの薄い色で描かれた髪に注目。このレイヤーに境界線効果をつけてみます。すると・・・

あっという間にアウトラインだけ濃くなりました。
この境界線効果、基本的にどのイラストソフトにもついているもので、ほとんどレイヤー効果として使うことができます。ふちの色を濃くする、ぼかすなど色々できるので知らなかった方はぜひ使ってみてくださいね。
さらに、発光レイヤーを新しく用意し、顔の輪郭、境界線に白を置きます。いわゆるハイライトです。「のっぺりしてるなぁ」と思ったとき、こうして輪郭・唇に沿ってほっそり白い線を入れてみてください。ちなみにアナログのときは、ホワイトで白をいれたり、はじめからハイライトを考えて塗らないようにする、もしくはマスキングインクやテープで白抜くという方法があります。
下は、ハイライトを入れたあとの絵です。

少しだけ艶っぽくなりました。なったんです。
さて、この記事を読んだあなたは、これで境界効果とハイライトのテクニック知識を得ました。「もともと知ってたよ」なんてかたはそっと胸にひめておいてくださいね。練習もしなくても、この記事どおりになんとなく、輪かくにそって白い線を入れていけばハイライトができるのです。
これがテクニック。人から人へかんたんに伝えられて、それをそのまま使えるものです。
たとえば、pixivなどでよく見かけるメイキングがあります。どうしてためになるのかといえば、上手いひとたちが「テクニック」を見せてくれているからです。
ただそれを見て知るだけではただの「知識」。(さっきもいったように、知識があるかないかだけでも大きくちがうのですが)「テクニック」は「知識」と似たりよったりなものですが、「知識」として置いておくだけなのか、「技」としてつかえるかどうか。「テクニック」として、じぶんのものにするかはあなた次第なのです。
③経験値
「結局これかよ」というひとにはざんねんですが、まぁ当然です。技能、熟練度、練習量とも言いかえができます。
たとえば、メイキングやお絵かき実況を見たことはありますか?
見たことあるひとはきっと共感してもらえると思うのですが、いざ自分がしようと思うとおなじようにはできませんよね。
同じように形をとろうとしても何かちがうし、線すら同じようには引けません。どうしてできないのでしょう?
それは経験がたりない、つまり技能が身についていないからです。
ここでちょっとしたエピソードを紹介します。
個人的な体験談なのですが、以前ご縁をいただいて、プロのかたにイラストの添削をしてもらったことがあります。
自分の描いた絵をその方に描き直してもらったのです。
うれしいことに「大きく直すところはない」とお褒めいただき、私の絵をその方が上からなぞるという形で添削していただきました。いわゆるトレスです。トレス、なのに、出来上がった絵は全く別物でした。
私が描いた線を上からなぞっただけなのに、明らかに出来がちがうのです。よく見れば、微妙にわたしの線とずれていたのです。それもほんの1ミリくらいの微妙な差です。
「んー・・・何でこの線のほうがいいかは、僕もわからないだよね」
この能力―――より魅力的な線を見いだす力は、彼の体に染みついているのです。
これがわたしと彼の経験の差。彼が自ら積み上げた経験によって得られた技能です。テクニックや知識とちがい、本人があたまで理解できていないことが多いのです。
なんでこの線がいいか、この色がいいか、このバランスがいいか。
ことばにはできない、理解していない、でもこれがいい。さっき、「知識」や「テクニック」と紹介しました。
しかし、経験だけでしっかり技能が身についているひともいっぱいいます。知識やテクニックとして、すなわち言葉として頭に入っていないこともあるのです。
私の添削をしてくださった絵師さんは自分の絵にかんして、しっかり理解し、説明もたくさんしてくださるひとでした。それでも「言葉にできない、でもこれがいいのはわかる」ということは何度かありました。わたし自身も絵をかいてるときに、「どうして、こうするのがいいの?」という問いに答え続けるのはむずかしいと思います。「なんとなく」。それが経験のつちったもの、身にしみこんでいる技能なのです。
「絵が上手くなるにはどうしたらいい?」「描いて描いて描きまくれ」。
こんな問いと答え、聞いたことないですか。この答えは冷たくも聞こえますが、あながち間違いじゃありません。
今回紹介した3つのなかで、もっとも画力を左右するのは、この経験です。あなたがつみ重ねたぶんだけ、イラストの基盤となるのです。
まとめ
おもにわたしが言いたいことは2つです。
・画力は「才能」だけでは決まらない
・一朝一夕で急激に上手くなることは不可能
イラストに限ったことではありませんが、世の中には「天才」はたしかにいます。実力を才能が決定することもゼロではないでしょう。でも、今回お伝えした三大要素など、それ以外の比率が大きいことも確かです。
また、残念なことに寝て起きたら上手くなってた、なんて魔法もありません。イラスト上達において大切なことは、じぶんに足りないものを見きわめること。そして、長い目線で、それを埋めていく作業をどれだけ繰りかえせるかです。そんな視線もふくめ、今回の記事を踏み台にして、イラストライフを楽しんでいただければ、うれしいです。